Dance Campのファシリテーター:Dean Mossさんのクリエイションへのアプローチ
2019.10.02

Dean Moss Photo: Tim TRUMBLE

12月城崎国際アートセンターで開催するDamce Campの応募〆切10/10迄、あと1週間ほどになりました。➡申し込み要
今回のファシリテーターであるDean Mossさんは、ニューヨークで長年に渡りアーティストとして第一線で活動し続けてきています。DeanさんのWebには、来年秋公演を予定している新作”Your marks and surface”の情報や、これまでの作品についての資料や映像などがありますので、是非、御覧ください。

今回、城崎でのDance Campへの参加を考えている参加者の皆さんに、彼の作品制作へのアプローチ、自身のクリエイションについて、少しでもご紹介できればと思いコメントをお願いしました。
このコメントを読むと、Dance Campで作品をつくるというプロセスそのものにじっくりとアプローチするDeanの目線と参加する皆さんとの深い対話を想像してプロセスにワクワクしますね。参加期間が合宿形式で、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれませんが、今回は、特別に参加費免除企画としています。交通費と食費はかかりますが、それ以上にクリエイションの真髄に向き合う機会となると確信していますので、迷わず応募してください!!この機会をお見逃しなく。

Dance Camp Project 水野立子

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ダンスやパフォーマンス作品を創り出すことは、答えをつくることではありません。むしろ、観客に向けて、具体的な経験やまさに歩んでいる旅として、実在するアイデアや問いかけのプロセスを明瞭にし共有することです。

■もっとも興味深いコレオグラフィーとは身体についてではなく、パフォーマンスを通じてダンサーと観客の間にある共有されるプレゼンスだと信じています。ですので基本的に、わたしは会話というもの、特にその会話の質に興味を持っています。

■それぞれの瞬間になにが必要なのかわたしたちはいつも知っているわけではないので、作品制作のプロセスはときに怖いものですが、それにもまして衝撃的に美しいのです。
ー by Dean Moss

テキスト:Dean Moss     翻訳:Kanako Shirasaki

制作へのアプローチについて書いてほしいと言われたのですが…
うーーーん、難しいですね。
アプローチは変わるのですが、いつも関連するアイデアから始まりますね。

わたし自身の存在にかかわる相反する、そして理解しがたい問いからアイデアはやってくることが多いです。そのうち、いくつかの問いは繰り返し発生します。たとえば、報われなかったり強制的な愛の本質、社会的なコミュニティの中におけるアーティスト自身の個人的なストーリーの果たす役割、親密な関係や植民地関係、移民や異文化間の関係における力学の複雑さ、伝統的に構築されたアイデンティティからの脱却、もしくは受容の中での苦難、など、例を挙げるとキリがないです。(もちろん、問いかけはいつもこんなにシンプルでクリアではありません)。

こういった問いの集まりが、やがてわたし自身の身体的な経験や能力と結びつき、アイデアのパターンをつくり出したり、時間をかけてフィルターで抽出された探求となっていきます。それを数ケ月から一年くらいかけて「料理」したあとでやっと、アイデアのパターンや身体的な経験が溶け合い、作品となりうるものの基礎となっていくのです。

ダンスやパフォーマンス作品を創り出すことは、答えをつくることではありません。むしろ、観客に向けて、具体的な経験やまさに歩んでいる旅として、実在するアイデアや問いかけのプロセスを明瞭にし共有することです。

もっとも興味深いコレオグラフィーとは身体についてではなく、パフォーマンスを通じてダンサーと観客の間にある共有されるプレゼンスだと信じています。ですので基本的に、わたしは会話というもの、特にその会話の質に興味を持っています。深ければ深いほど、よい。期待、ムーブメント、音、リズム、リスク、心的イメージ、歴史、ウィット、高度な技術、そして感情的な内容といった、言葉では語られない言語。それはとても明確でオープンです。

アーティストたち、多くのコラボレーター、そしてさらに数多くいる観客のみなさんに、わたしはとても感謝しています。それぞれの瞬間になにが必要なのかわたしたちはいつも知っているわけではないので、作品制作のプロセスはときに怖いものですが、それにもまして衝撃的に美しいのです。知っていること、そして知らないことのフローを共有することは予期しない喜びであり、そのフローの生々しいうねりがプレゼンスをダンスへと変えていくのです。

“Nameless forest” by Dean Moss@ The Kitchen
Performer: Sari Nordman, DJ McDonald, Pedro Jiménez and Kacie Chang
Photo_Tim Trumble