踊場 odoriba Vol.7
2019年度の実施報告書「フリツケカをイクセイする?」(2020年7月発行)から、岡山プラットフォーム の山口さんのご報告を紹介します。
なぜこのプロジェクトを行おうとしたか、2019年度の成果、どんな振付家を育成したいと考えているか、をお聞きしました。ぜひご覧ください。
なぜこのプロジェクトを行おうとしたか、当初目的に対する成果、そして今後の展望。
ダンス作品を創りたい、踊りたいと日々思いあぐねいている振付家・ダンサーは多くいる。しかしながら、現在の日本では舞踊についての教育機関・カンパニーが組織的に成立しているところはまれであり、大学など学生生活を終了した後作品制作をする場を失い作品発表の場を求めている者が多数いたり、自ら作品制作を行う際に客観的な視点や、総合的要素を加味して完成させるまでに至らず未熟なままで人前に上演してしまうことのある者がいる。じっくりと自分と向き合った作品を人前にさらけ出す、踊りのための場は意外に身近にない。 そこで実験的チャレンジ的にダンス作品を披露したいという新進気鋭の振付家・ダンサーを募集し、新作を発表する場として踊場odoribaを開催した。
新作発表の場であるという条件のもと育成者となる作品上演者4名(組)が作品上演を行い今回の参加者は岡山在住者2名(組)、神戸1名(組)、熊本1名(組)であった。
前日リハーサル、当日ゲネプロ、1回目公演、2回目公演の上演ごとにゲストアドバイザー(紅玉:大谷燠氏)からダンス制作についての概要・個々の作品に対する細かなアドバイスをいただき、わずか2日間ではあったが現地でそれぞれが作品に向き合い作品を変化させることのチャレンジを行い、客観性のある見る者に共感を得る作品を上演することができるようになった。
上演後の話場hanashibaでも紅玉氏からコンテンポラリーダンスの作品の作り方見方についての解説をいただいて観客が作品を見るための糸口が示されたことで、観客からの感想・質問が活発に行われ相互にコンテンポラリー作品に対する理解を深めることができた。
課題については、新作発表をしたいという育成者募集の機会が地方都市でも幅広く宣伝し知られるための工夫が必要である。今回の参加者からもこのような機会はありがたくまた機会があれば参加したいとの声をいただき、一定地域にチラシを配布するのみではなく、SNSなどを有効に使用して幅広く告知できる方法が必要である。また、新作発表の場であるので、上演作品の未熟さは否めないが、そのための観客動員・広報の仕方が難しいことを感じた。
全国規模で公募することで他都市に在住する振付家・ダンサーに岡山という地を知っていただくとともに地方都市である開催地岡山に在住する者にも踊場odoribaが単なる私的なダンス公演ではなく、公共性があり、コンテンポラリーダンスがどのようなダンスであるか興味を持っていただく機会を提供する場であることを願う。また令和2年度の開催については見送るが、この企画は単発のものではなく、継続的に開催することで、ダンス関係者・観客が多くダンス作品に触れる機会も創り出す場となることを願う。
あなたは、どういう振付家を育てたいと思いますか。
また、そうした振付家を育てるために、何が大事だと考えていますか。
貪欲に作品を創りたいと願い、真摯に身体と向き合い、観客と向き合い、総合的に作品と社会を見る力のある振付家が必要だと思う。そのために必要なものは時間・場所・人材(スタッフ)・資金・理解である。
(コンテンポラリーダンス・プラットフォームを活用した振付家育成事業「ダンスでいこう‼」2019報告書 フリツケカをイクセイする? 第二章p42-47)